この春、ドキュメンタリー映画『A2-B-C』イアン・トーマス・アッシュ監督にお話を伺う機会がありました。
最初に、映画を見せて頂いたあとで、監督から30分ほどお話を聞きました。
こうした放射能被ばくに関する仕事は、
「したいわけではないが、やらなければならない」「使命」といった言葉を口にされていました。
監督も、事故前まではとくに、このことを考えていたわけではないそうです。
「10年後に、こんなにやらなくってもよかったね、という後悔のほうがずっといい」
「心配しすぎでいい。普段だって、健診や人間ドック、車だって車検をするはず」
ともおっしゃっていました。
映画の中では、小学校へインタビューに行き、拒まれたりするシーンも出てきます。
日本在住だけれども、(確かに明らか、見た目は“日本人”じゃないので)
「外国人だと思われるから」聞けることもあるのかも、という話も出ました。
数人の座談会のような席で、現状についての厳しい発言も飛び交います。
福島県のなかで、ここまでつっこんで取材するのは、大変な困難があると感じました。
なぜ、放射能被ばくのことを? という質問に
「神に言われたとしか言えない」
と監督。
先日、ちょうど東京(東中野)で上映されていたのですが、
これからは、全国での上映会がスタートするそうです。
多くの方が劇場に足を運んでくれるといいな、と
心から思います。
伊藤
福島の現状を描いたアメリカ人監督「一番問題なのは忘れること」と呼び掛け
20日、ポレポレ東中野でロングラン上映中だったドキュメンタリー映画『A2-B-C』の上映が最終日を迎え、日本在住のアメリカ人監督、イアン・トーマス・アッシュ監督と、岐阜環境医学研究所・座禅洞診療所所長の松井英介氏がトークショーを行った。
同作は、福島第一原発事故後、福島の子供たちの間に、甲状腺に小さなしこりなどがある「A2判定」を受けた子供が急増しているという現実にカメラを向けたドキュメンタリー。なかなかメディアでは登場しない話題を取り上げた作品ということで人々の関心を集め、当初予定されていた上映期間を延長。最終日となったこの日も、多くの観客で劇場は埋まっていた。
この日は、「放射線被ばくから子供たちを守る」などの著書があり、マンガ「美味しんぼ」の「福島の真実」編に登場したことでも知られる松井所長がゲストとして来場。客席には、子供たちの内部被ばくに関心がある女性の姿も数多くあり、松井所長たちに質問を投げ掛けていた。
「子供の甲状腺がんは今までほとんどなかった」と語る松井所長は、「国立がんセンターの統計で見ても、100万人に1人くらいだった。それが(事故後は)福島でがんの疑いのある子供が約90人。その中で、実際に手術を受けた子供が約50人。まだ(福島第一原発事故から)3年間で、統計は済んでいませんが、非常に大きな数値です」と解説。さらにこの数値を事故の影響と見るか、関係ないとするかという点では識者の間でも論争が起こっていることを付け加えた。
また観客からは、この映画に登場する母親に対して「いじめられたりしないのか」と心配する声も上がり、アッシュ監督は「大丈夫だと思っている人は、放射能の問題について考えたくないから取材を受けてくれない。ここまで勇気を持って声を上げてくれるお母さんはマイノリティーなんです」とコメント。海外20以上の映画祭で上映されている本作だが、海外の観客からは「『福島はもう大丈夫』というニュースを聞いていたので、ビックリした」などの反響があったという。「一番問題なのは忘れること。東京は今日までですが、明日から全国で公開されるので、続けてお母さんたちの声を聞いてもらいたい」とアッシュ監督は呼び掛けていた。
映画『A2-B-C』は全国順次公開中